“シリコンバレーの天才”が語ったベンチャー哲学
だれにも負けない情熱がイノベーションを創りだす
Box CEO,Co-founder&Chairman Aaron Levie
2015年にニューヨーク証券取引所に上場。
シリコンバレーのベンチャーキャピタリストから“Genius(天才)”と称される。
急成長の要因や成功する起業家の条件などをBoxのCEO、Aaron Levie氏に聞いた。
※下記はTech通信Vol.03(2015年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
セキュアな独自技術で“新しい働き方”を可能にする
―事業内容を教えてください。
おもに企業向けのデータストレージサービスを運営しています。きわめて安全性が高いセキュアな環境のもと、ユーザーはどこからでもクラウド上の情報にアクセスできます。
クライアント企業・ 組織数は約5万社。GE、P&G、Astra Zeneca、Toyotaなど名だたる企業がBoxを利用しています。
―なぜBoxは多くの支持を集めているのですか。
オンプレミス(自社運用)からクラウド、デスクトップからモバイルへの移行など、いま企業は大きな変革期のなかにあるからです。
それらは、組織のあり方、仕事の進め方など、企業活動を根底から変革する大きな波。これをセキュアな独自技術によって解決することがBoxのミッションなのです。
使いやすさはもちろん、デザイン性などもユーザーから評価されている部分です。Boxのコンセプトはシンプルかつエレガント。過去に複雑な機能を提供したこともありましたが、ユーザーから支持されませんでした。いまや企業向けのソフトウェアも、個人向けと同じくらい簡単に操作でき、デザイン性が高いものでなければ評価されない時代なのです。
―ユーザビリティを重視したことが成長要因だと?
それも要因のひとつではありますが、ほかにもBoxが成功した大きな理由があります。それは、新しい効率的な働き方を可能にするという点。
Boxを使えば、世界のどこにいても最新の情報を共有しながらチームで効率的に協業するワークスタイルを可能にします。情報をリアルタイムで共有し、チームで効率的に仕事を進めることができるんです。
この10~20年の間でワークスタイルは大きく変化しています。これまでの仕事の進め方はクローズド。他部門や社外と情報を共有せずに、個人で働くような感じで仕事をしたり、役所のように縦割りで仕事をすることが一般的でした。社内外との連携も不十分。とても非効率だったのです。
それよりも、他部門や取引先、顧客とリアルタイムで情報を共有し、連携して仕事をするほうが、うんと効率的ですよね。それを可能にする新しいテクノロジーツールがBoxなのです。
オープンな企業文化のなかから破壊的アイデアが生まれる
―革新的なアイデアを生み出せる源泉を教えてください。
Boxには、フレンドリー、オープンというスタートアップの優れたマインドがあり、それを今後も保持し続けようとしています。そうした企業文化があるからこそ、固定観念にしばられない破壊的で革新的なアイデアが出てくるんです。
Boxには、いい意味で中間がありません。われわれと一緒に仕事をすれば、エキサイティングでとても楽しい時間を共有できるでしょう。
―起業の原点を聞かせてください。もともと起業家になりたかったのですか。
10歳の頃には自分で会社をつくりたいと思い、そのための行動もしていました。
共同創業者のメンバーたちは、シアトルで一緒に育った仲間たち。彼らとは中学、高校時代にたくさん事業のアイデアを出しあい、検索エンジン、オンライン不動産、店舗情報サイト、イベント情報サイトなどの会社を実際につくってもみました。
そのなかで生まれたのがBox。10番目くらいのアイデアでしたね。
―Boxのビジネスアイデアは、いつ生まれたんですか。
2004年、まだ大学生だった頃です。複数のコンピュータを利用したり、ほかの人とファイルを共有する際、そのプロセスがとても面倒だと感じ、もっと簡単な方法がないかと考えた末に、Boxの原型が生まれました。
時代も後押ししてくれました。ストレージのコストが下がり、インターネットが高速化。ブラウザも進化しました。そのため、クラウドでのデータ共有が実現可能なサービスとなったのです。
―シリコンバレーで成功するには、なにが必要だと思いますか。
だれにも負けない情熱があるかどうか、ということですね。
なぜなら、スタートアップを成功させるのは非常に難しいからです。かんじんなのは「これをつくりたい」「こんな問題を解決したい」という情熱があるかどうか。そして「絶対にやり遂げるんだ」という強い気持ちをもっている。そうでなければ起業すべきではありません。失敗する確率が高いでしょう。
起業したいという人に「なぜ、あなたは起業したいの?」と聞くと、「起業家の本を読んで」とか「誰かにすすめられて」といった答えが返ってくることが少なくありません。しかし、そうした理由、動機は間違っていると思います。
Boxにたくさんの一流エンジニアやおもしろいアイデアをもっている人間が集まるのは、イノベーションを起こすという熱い情熱が組織のすみずみに浸透しているからです。
日本市場にも本格進出。成功に手応え
―ところで、たびたび来日されていますね。日本企業の働き方については、どのような印象をもっていますか。
日本の企業でも、ワークスタイルの変革の必要性を感じている人たちが増加している、との印象をもっています。
たとえば、楽天の三木谷さん。彼は「日本企業は変化しなければならない。それも非常に速いスピードで」と訴えていますが、私もそれに共感しますし、同様の考えをもっている日本企業の経営者は多いのではないでしょうか。
21世紀の企業のあり方や新しいワークスタイルについて、日本の企業は世界のロールモデルをつくりあげられるポテンシャルがあると私は思っています。
―日本市場での本格展開を開始しました。手応えはどうですか。
Boxは日本市場でとてもうまくいくと信じています。経営スタイルの進化をもたらす新しいテクノロジーの活用にチャレンジしている日本の企業は少なくないからです。
世界各国の取引先と情報を共有し、迅速な経営判断を行う。そんな、効率的かつ生産的で、協力的に仕事ができる環境をBoxは日本の企業に提供できます。
最高の仲間がいるからこそ大きな仕事を成し遂げられる
―最後に、起業志向がある日本の若者へのアドバイスを聞かせてください。
3つあります。まず、テクノロジーの大きな波に乗ること。いまだったらクラウド、モバイル、バーチャルリアリティなど。ビジネスをつくる場合、テクノロジーの流れに沿うべきで、波に逆らってはいけません。
次に、自分が情熱を感じる事業を選ぶこと。10年は没頭できる事業を選んでください。最後に、毎日一緒に働く仲間は、自分が心から一緒に働きたいと思える人を選ぶこと。最高の仲間がいるからこそ、大きなことを成し遂げられるのです。
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