※下記はTech通信Vol.03(2015年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―技術陣の力量が試された場面を教えてください。
RDBから脱却するには、RDBでは当たり前に存在していた周辺ツールを新たに開発する必要がありました。また、分散性能を活かしたまま並行処理を適切におこなう、分散トランザクションの仕組みも必要でした。
分散テクノロジーは一見して、Googleなどが論文を出していたり、オープンソースとして公開されていたりするので、簡単そうに思えます。しかし、エンタープライズアプリケーションの分野は、Googleでさえ手をつけられていない、まったく未知の領域。そのギャップを埋めるため徹底的に研究開発を重ねたことで、エンタープライズITに適合する、速さとデータの保全性を担保したプラットフォームをつくりだすことができたのです。
また、「HUE」では、ビジネスにかかわるツール群を取り込み、有機的につなげようとしています。速度は向上したものの、いままでと同じ価値しか提供できないのでは、ユーザーに感動は与えられません。この点においても、エンジニアのチカラが試されたといえるでしょう。
具体的には、チームやプロジェクトなど双・多方向でのコミュニケーションを実現するエンタープライズタイムラインやエンタープライズスプレッドシートなど、新たなアプリケーションを開発しました。
―開発プロセスで若手エンジニアが活躍したエピソードを聞かせてください。
浅野という2012年新卒入社のエンジニアの話をしましょう(詳細は3ページ参照)。描画エンジンの領域で活躍してくれました。この分野の技術は15年ほど前に生まれ、どんどん革新も進んだのですが、7~8年で収束。現在は完成されたオープンソースがある。だから当初は、「HUE」でもそれを採用しようと思っていました。
ところが、浅野が「もっと速いのをつくれますよ」と。彼の能力は信頼していたものの、7~8年前の当時の技術変遷のことは知らない若手です。「昔の技術の焼き直しになるだけなのでは」と懐疑的だったのですが、「やりたい」という意思を尊重し、とにかく任せてみました。
そして2週間後、彼がつくったものを見て「これならいける!」と納得したのです。従来よりも圧倒的に速く、並列処理やネットワークの最適化など、既存のソフトではできていなかった機能も実現。もちろん「HUE」に採用し、圧倒的な速さの源泉になっています。定番になっている製品でも、優秀な人間が見直せば、ブレイクスルーは起きるのだと学びました。
人を楽しませたいか人の役に立ちたいか
―キャリアアップをめざす若手エンジニアにメッセージをお願いします。
ソフトウェアを動かすのはソースコードです。そのため、きれいなコードをかける人材は重宝されるでしょう。
それができたうえで、自分がしたいことは「人を楽しませること」「人の役に立つこと」のどちらなのか、胸に手を置いてよく考えてみてください。この2つはまったく志向が異なる分野です。
「流行しているからゲーム系の会社に行こう」などとなんとなく流れてしまう前に、自分はなにに意義を感じるのかを改めて考えてもらえればと思いますね。
Seiichiro Inoue(いのうえ せいいちろう)プロフィール
東京大学電子情報工学部を卒業後、ロータスデベロップメントジャパン株式会社(現:日本アイ・ビー・エム株式会社)に入社。米国本社でロータス・ノーツの開発に携わる。帰国後の2001年、アリエル・ネットワーク株式会社を創業、CTOに就任する。2004年に同社が株式会社ワークスアプリケーションズのグループに参画したのにともない、同社のシニアフェローを兼務。「HUE」の開発プロジェクトでは、アーキテクチャーの基本設計の責任者を務める。おもな著書に『P2P教科書』(インプレスR&D、共著)『パーフェクトJava』『実践JS サーバサイドJavaScript入門』『パーフェクトJavaScript』(いずれも技術評論社)。
企業情報
設立 | 1996年7月 |
---|---|
資本金 | 36 億2,650 万6,000 円 |
売上高 | 365 億7,400 万円(2015 年6 月期:連結) |
従業員数 | 3,872 名(2015 年6 月末時点:連結) |
事業内容 | 大手企業向けERP パッケージソフト「COMPANY」および「HUE」の開発・販売・サポート |
URL | (公式ホームページ)http://www.worksap.co.jp/ (Research@WAP)http://research.worksap.com/ |
関連インタビュー | 代表取締役最高経営責任者(CEO) Masayuki Makino エンジニア座談会 Advanced Technology&Engieering本部 Kohei |
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